「お父様、御遺言は……?」
発端

信州財界の一巨頭、犬神財閥の創始者、日本の生糸王といわれる犬神左兵衛翁が、八十一歳の高齢を
もって、信州那須湖畔にある本宅で永眠したのは、昭和二十X年二月のことであった。
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絶世の美人

昭和二十X年十一月一日 ―それは金田一耕助がやってきてから、すでに二週間もたった後のことである
が― 信州那須湖畔にある那須市では、朝からなんとなくものものしい空気をはらんでいた。
それは南方から復員してきて、どういうわけか、そのまましばらく東京に滞在していた、犬神家の嫡流、犬
神佐清が、迎えに行った母の松子とともに、昨夜おそく、とうとう那須市の本邸へ入ったという知らせが、は
やくも町じゅうに広がっていたからである。
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斧・琴・菊

古館弁護士は震える指で、あの貴重な封筒を切った。
それから、低いながらもよくとおる声で、遺言状を読みはじめた。
「ひとつ……犬神家の全財産、ならびに全事業の相続権を意味する、犬神家の三種の家宝、斧・琴・菊
は次の条件のもとに野々宮珠世に譲られるものとす」
珠世の美しい顔がさっと青ざめた。ほかの人々の顔も、珠世に劣らず青ざめた。
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琴の糸

 ― 佐智君は失敗した。珠世さんは現在もいままでと変わりなく純潔であることを証明す。
                                                        影の人
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大団円

しかし、松子はあいかわらず、悠然としてたばこを吸い、何度も刻みを詰めかえながら、
「小夜子は近く子を産みます。その子の父は佐智です。してみると、その子は竹子さんにとっても梅子さん
にとっても孫にあたるわけです。珠世さん、わたしのいうことがわかるわね」
「はあ。わかります。それで……」
「それで、お願いというのはほかでもないの。その子が大きくなったら、犬神家の財産を半分わけてやって
いただきたいの」
竹子と梅子はギョッとしたように顔を見合わせる。珠世は即座にキッパリと、
「小母さま、いいえ、お母さま、よく分かりました。きっとあなたのお言葉どおりにいたします」
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                 〔 GR Digital (with GW-1 : 5枚目) 〕


(あの、しゃがれ声で)
          「母さん、僕です、佐清です。ただいま帰ってまいりました…… 」


                   ということで、「トラックバック企画”我が家”に参加」さ (あ~っはっは~)
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by ara_umi | 2007-01-17 23:37 | 小さな旅(ワタシの城下町) | Comments(2)
Commented by masai at 2007-01-18 22:30 x
ara_umiさん、(遅ればせながら)今年もよろしくお願いいたします。
横溝正史は昔々、ほぼ全巻を読破した人(一応、自慢ごと)ですので、それは置いておいて(^^)、写真、スゴイですね。
またマニアック?な質問ですが、新潟市にある豪農(豪商?)の旧宅なんでしょうか。
よろしければ、お教え下さい。
Commented by ara_umi at 2007-01-20 00:48
masai さん、こんばんは。

横溝本、読破ですか!すごいですねぇ。
でも、似たようなシチュエーションが多くて混乱しますよね(笑)

マニアックな質問の答えはおおむねご想像の通りですが、おいおいと全容を発表します(笑)
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